大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1021号 判決

被控訴人は、簡易の引渡は借家法第一条第一項にいう引渡には該当しないと主張するけれども、同法条は、借家法が借家人保護の見地から建物の賃貸借について第三者に対する効力を認めたのであるが、そのために建物について物権を取得した者が不測の損害を被ることのないようにとの配慮から建物につき特に引渡あることを以つて賃貸借を右第三者に対抗することのできる要件とすることを規定したものであるところの見地からことを考えるとき、現実の引渡と簡易の引渡とを別異に取り扱わなければならないとする合理的根拠はこれを見出すことができない。けだし、ここにいう引渡とは賃借人による建物に対する事実的支配が賃貸人から借家人に移転している関係を指すものであるから、これを現実の直接支配と代理人による間接支配とを特に差別する理由がないからである。従つて前記法条にいう引渡は、簡易の引渡をも含むものと解するのが相当である。

(岡咲 田中 脇屋)

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